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インフラ整備

2021.08.23 これからのインフラについて

インフラの維持

近年は毎年のように各地で大雨による被害が発生している。日本列島では大雨が降りやすくなっており、これが被害を大きくしている可能性が高い。
インフラ整備に合理性や戦略性が無ければ、必ず後の世代にツケを回す結果となる。
これからのインフラ維持について考える。

1.危険地域に住む人の数は増加している

静岡県熱海市の伊豆山地区で発生した大規模な土石流では、数十人が亡くなり、行方不明となり、建物が流されるという極めて大きな被害をもたらした。今回、発生した土石流は、盛り土が原因である可能性が高まっており、そうであれば限りなく人災に近いということになるが、それでも大雨が引き金になったことは間違いない。
熱海の盛り土問題では詳細は明らかではないが、開発で生じた土砂の廃棄だったことも間違いなく、こうした杜撰な盛り土は全国各地に存在している。宅地の造成と残土の処理は表裏一体の関係であり、最終的には国土開発全体のあり方につながる。日本では人口の合理的な分散化が進まず、集中して宅地が乱開発されているのは以前から指摘されてきた。こうした戦略性のなさが一連の被害拡大に影響した可能性は否定できない。

近年は毎年のように各地で大雨による被害が発生している。日本列島では大雨が降りやすくなっており、これが被害を大きくしている可能性が高い。8月に入ると、日本列島には次々と台風がやってくるが、台風の被害も年々大きくなっている。だが、こうした変化はここ数年で急に発生したものではなく、20年近く前から何度も指摘され続けてきた。
少なくとも大雨や台風の被害が増えることが分かっていれば、危険な地域への宅地開発を制限するといった対策は打てたはずである。ところが、日本は全く逆の政策が行われてきた。浸水が想定される区域に住む人の数は1995年から2015年の20年間で約150万人も増えている。これは水害が発生しやすい地域に新しく宅地が開発されたり、タワーマンションの建設などが行われ、住人が急増したことが原因と推定される。

新規の宅地開発は容易ではなく、地理的条件を吟味し過ぎると開発できる場所がなくなってしまうという現実問題はあるかもしれない。だが、大雨の被害多発が予想される中、わざわざ危険なエリアでの宅地開発を進めているのは望ましいことではない。東京への一極集中さえなければ、日本中には住宅地になる平らな場所はいくらでもある。

2.日本の道路の危険性

インフラ整備に合理性や戦略性が欠けるという点では道路も同じである。最近、事故が発生した八街市の現場では見通しは良好だったもの、道幅が狭くガードレールや路側帯も設置されていなかった。小学校のPTAからは、複数回にわたってガードレール設置の要望が出ていたという。

八街市では、道路の危険性について認識していたものの、予算制約などの関係から、より危険度の高い場所の整備を優先していたため、事故が発生した場所の整備は十分に行われていなかったという。
現時点において、整備の優先順位が低かったのはやむを得ないかもしれないが、一般論としては、危険な道路の問題というのは最近になって顕在化したことではない。日本の道路は危険な箇所が多いというのは、昭和の時代から何度も指摘され続けてきたことであって、当時からもっと戦略性のある整備を行っていれば、事態は改善していただろう。

日本の道路が危険であることは数字でもハッキリしている。日本における人口10万人あたりの交通事故死亡者数は3.7人と低い部類に入るが、歩行中に死亡する割合が35%と諸外国と比較して突出して高い。日本の道路は歩行者の安全を優先する形では整備されておらず、クルマに轢かれて死亡するリスクが高いというのが現実である。
道路の安全性を高めるためには相応のコストが必要となり、そのためには新規の道路建設のニーズとうまく調整する必要がある。だが日本の場合、新規建設ばかりが最優先され、安全面が後回しになってきた。豊かなになった成熟国としては、ふさわしくないやり方といってよいだろう。

3.インフラの維持をどうするか

水道インフラがコスト面がいい加減だったことが、大きな問題として浮上しつつある。現在の水道インフラを維持するためには、多くの自治体で大幅な値上げが避けられない状況となっている。

将来の人口推計や各自治体の減価償却費の推移などをもとに、2040年に水道事情が赤字にならないためには、いくらの料金設定が必要かという計算が行われた。2018年時点における水道料金の全国平均(平均的な使用量の場合)は月額3225円だが、2043年には4642円になる計算であり、人口が少なく人口密度が低い自治体ほど、値上げ利率が高くなる傾向がある。
人口減少と更新費用の発生そのものは不可避だが、今のタイミングになって急に値上げが必要というのはやはり不自然である。人口動態は数ある統計の中でも最も将来予測が容易なもののひとつであり、日本の人口が減少に転じることは30年以上も前から分かっていたはずである。インフラの更新費用も建設した時点で将来予測できるものであり、当初から当該コストを料金に織り込むべきものである。厚生労働省が行った調査によると、全国の水道インフラを法定耐用年数で更新した場合の更新費用は実績値を大きく上回っているという。当初から設備の更新を考慮に入れた料金体系にしていれば、急激な値上げを回避できた可能性が高い。

水道は人口増加分しか整備されないのでまだマシだが、原理的に道路や橋、宅地などはいくらでも開発ができる。だが、インフラというのは必ず劣化するものなので、減価償却を設定し、当該分だけ更新費用を確保できなければ継続して利用はできない。
日本ではこれまで設備の更新を考慮に入れず、新規建設の拡大を最優先してきたが、これは必ず後の世代にツケを回す結果となる。新規建設は利益が大きく、政治的にも旨味があるが、インフラというのはこうした目先の利益で作ってはいけないのである。

日本の公共インフラは今後、急ピッチで劣化が進み、あらゆる分野で維持が困難になる。一方で大雨や台風の被害拡大は気候の変化に伴うものなので、今後も容赦なく日本列島を襲ってくるだろう。しかも日本政府は財政的に極めて厳しい状況にあり、以前のようには大盤振る舞いはできない。可能な限り人口集約を進めてインフラ更新を合理化し、費用を抑えていく以外にこの問題を解決する方法はない。

加谷 珪一

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