富士コンサルタンツ
株式会社

MENU

2021.06.28 未来のこと

日本のモビリテイ革命はどこに行くのか

大都市間では新路線のプロジェクトが続く一方、人口減少が続く地方では公共交通機関の維持が難しくなっている。
複数の移動手段を組み合わせて一体のサービスのようにして使う「MaaS(Mobility as Service:モビリティ・アズ・サービス)の考え方で、マイカー無しでも生活できる仕組みを構築する動きが加速している。

日本のモビリテイ革命はどこに行くのか、今求められているのは何かを解説する。

1.MaaSとは?

大都市間では新路線のプロジェクトが続く一方、人口減少が続く地方では公共交通機関の維持が難しくなっている。複数の移動手段を組み合わせて一体のサービスのようにして使う「MaaS(Mobility as Service:モビリティ・アズ・サービス)の考え方で、マイカー無しでも生活できる仕組みを構築する動きが加速しそうだ。

「所有から利用へ」「モノづくりからサービスへ」という動きが、あらゆる業界に押し寄せている。ついに自動車業界もその流れに飲み込まれようとしている。だが、単に車をサービスとして提供したり、車に新たなサービスを組み合わせたりすることがMaaSではない。ヨーロッパ発のMaaSはMobirity as Serviceの名の通り、モビリティ(移動)を第一に考える。欲しいのはクルマ(移動手段)ではない。モビリティ(移動)なのだ。

MaaSでいうモビリティとは移動できる能力、あるいは自在に移動できる状態にあることを意味し、あくまで動く側の移動を捉えた言葉だ。

これに対して運ぶ側の視点でとらえた言葉がトランスポート(輸送、運送、交通機関)だ。前者はユーザー目線、後者はサービス提供者目線である。

2.所有から利用へ

モビリティの先鞭をつけたのがカーシェアリングだ。「所有から利用へ」と自動車メーカーや駐車場機器メーカーがカーシェア事業に参入した。日本のモビリテイ革命はどこに行くのかカーシェアに続いて、開発されたのがライドシェアだ。マイカーを使った移動サービス(ライドシェア)が新ビジネスとして認知された。カーシェアと違って車両や駐車場のようなアセット(資産)が不要で、ドライバーと乗客をマッチングするシステムさえあればスタートできる。ライドシェアにはIT企業や自動車メーカーが参入することで、サービス化の流れ(所有から利用へ、モノづくりからサービスへ)が不可避であるとの印象づけた。

日本は20年の東京オリンピック・パラリンピックまでに、自動運転を実用化することを宣言している。自動運転になると「所有から利用へ」の流れが加速する。運転から解放されたとき、車が移動するリビングやオフィス、公共交通の空間になるため、この新しい移動空間を対象にしたサービスの立ち上がりも期待できる。しかし、現状では、運転者はすぐに運転に戻れる体制にいなければならないとしている。

日本では、ライドシェアが本格的に解禁されていないが、ヨーロッパではマルチモーダル型プラットフォームが先行して登場している。既存の公共交通のみならず、カーシェア、ライドシェア、自転車シェアも含めて最短ルートをソマホで検索できて、予約・決済までをワンストップ(1か所で用事が足りる)で提供するサービスが2010年代に続々生まれた。

この新たな交通手段の登場によって、都市部の移動の選択肢が多様化した。加えて、スマホアプリが、最適なものを推奨し、手配してくれるようになった。これは自動車メーカーや公共交通業者、つまり既存の供給者側(トランスポート)には困ったことかもしれないが、需要側(モビリティ)には歓迎すべきことである。

移動を自己責任で委ねるか、公共サービスを重視するかは国によって違う。ヨーロッパでは石油ショックと温暖化というエネルギー危機を経て公共交通への回帰が進んだが日本にはまだそのような動きは見られない。

いまだに自動車産業に経済を依存している日本では、長引く不況に対して、エコカー減税などで車の消費を煽ってきた。

一方で、特に人口減少・高齢化が進む地方部を中心に、公共交通の撤退・縮小が進行して、全体としてマイカーへの依存率が高まっている。ヨーロッパではかなり小さな町村でも公共交通の整備を重視する。個人の移動を基本的人権の一つとして考える伝統があり、公共交通に税金を投入するのは正しいとされてきた。

3.日本版Maasは、黒船か、開国か

日本ではどうだろうか。ライドシェアが本格的に解禁されておらず、フリーポート型(乗り捨て可能)のカーシェアもないため、そもそも選択肢が乏しい限界はあるが、私鉄各社はバスもタクシーも傘下に収めているので、予約や決済や料金体系を持ったシームレスなモビリティサービスの提供に最も近い位置にいる交通業者だ。

また、地方都市において、MaaSを実現するためには何が必要か。

  • 自治体のリーダーシップ

街づくりは自治体の権限だし、交通政策も地域の合意形成されれば、可能性が出てくる。マイカーに頼らない、「万人に開かれたモビリティ」を実現し、誰もが安心して暮らせる街をつくるのは自治体の責務である。

  • 交通手段の多様化

地方都市でクルマ依存が進むのは、それ以外の交通手段が乏しいからだ。「第三の交通手段」端的に言えば、ライドシェア(マイカーやタクシーの相乗り)を本格的に解禁する以外にない。ライドシェアは地方都市のモビリティ環境を変革する。

多くの地方都市では、バスとタクシー事業の両方を行う交通事業者が、寡占的に交通市場を支配している。これらの交通事業者にライドシェアを運営させる。ライドシェアで需給に合わせてタクシーを補完できれば、全体の利用者を増やせる可能性がある。

  • 統合型プラットホーム(土台)の構築

時刻表だけでなく、リアルタイムの車両の位置情報が共有され、予約や決済も一括できるようにするため、異なる事業者間でもデータの連携やシステム統合が必要だ。そのうえで、既存のバスやタクシーとライドシェアをパケージにした定額のサブクリプションモデル(期間内の使用権)が提供できるようになれば、マイカーからのシフトを促すこともできるだろう。

4.まとめ

今や車をつくり、売っていれば皆が幸せになれた時代は終わった「個人に閉じたモビリティ」ではもはや人は移動しないし、経済は活性化しない。今求められているのは「万人に開かれたモビリティ」の実現だ。そのためのMaaSだと信じて、地方都市の自治体と交通事業者は、真剣に取り組みを始めるべきだ。

MaaSという黒船は、この国のモビリティに開国を迫っている

 

日経トレンディ2019.1月号


当時はコロナのことなど思いもよらなかったが、コロナが終息すれば、今後の方向性は変わらないだろう。

ただし、テレワークやWeb会議が広まって地方移住が起これば、MaaSの進捗が早まるのではないか。これには自治体首長のリーダーシップが期待される。

OTHER COLUMN 他のコラムを見る